2013年7月4日木曜日

団塊世代の退職で浮く人件費を若者の給料に回そう

ある外資系企業が世界同時不況前に行ったという調査結果の伝聞ですが、金融資産(不動産は含まない、債券や株式や貯金だけの合計)を一億円以上持っていた個人が世界中に九五〇万人おりまして、そしてなんと、そのうちの六人に一人、一五〇万人は日本人だったそうです。逆に計算すれば日本人の八五人に一人がこれに該当します。しかもその一五〇万人の日本の大金持ちが持つ金融資産の合計は四〇〇兆円だったそうで、ということは日本の一四〇〇兆円の個人金融資産のうち1000兆円は、そこまで金持ちではない申の上のクラスが分散して持っていたということになります。

信じられない方も多いでしょう。ですが考えてみてください。戦後の日本経済の大発展の申で、たとえば従業員持株会や系列企業持株会などを通じて早い段階で今の先端企業の株を多く保有していた方には、目立たずに暮らしているけれども実は世界の基準で考えれば大金持ち、という人が大勢いらっしゃるのですよ。とはいっても彼ら高齢富裕層の資産は、消費に回らない限り企業の売上にはならず、我々下々の者の個人所得にも計上されません。そして、すでにお見せしたような現象、すなわち「税務署に申告された個人所得が〇四-〇七年に一四兆円も増えたのにこの間日本でのモノ消費がまったく増えなかった」という事実は、好況時においてすら、彼らが消費を拡大させなかったことを示しています。一四兆円もの申告所得の増加分、豪邸でもドレスでも高級車でも書画骨董でも買ってくれていれば、日本の小売販売額は史上最高を更新していたのですが。

またそうこうしているうちに不況になって、〇八年の一年間に日本人の金融資産は一一〇兆円減ったそうなのですけれども、その一〇分の一の一一兆円でも目減りする前に彼らがモノを買うのに回しておけば、これまた日本の小売販売額は市場最高水準に近いところまで達していたのです。 決して無理な話ではありません。一四兆円というのは一四〇〇兆円超の個人金融資産のたった一%ですよ。毎年その額を使ってもI〇〇年分の貯金があるのです。なぜ彼ら富裕層は、この際モノを買えばいいところを、目減りする金融資産をそのまま持ち続けていたのか。政府任せにしていないで自分の資産を守るために自らが行動しなければならないという自覚、そのためには今は運用ではなく自ら消費をすべきタイミングだということを判断する能力がなかったからです。

それがゆえに私は、彼ら自覚なき強者=高齢富裕層から、若い世代への所得移転を促進すべきだと言っているわけです。私は「困窮している一部の高齢者世帯への給付を減らして若者に金を配れ」と言っているのではありません。すでに引退した高齢者を「オマエも市場経済の中できちんと競争して役割を果たせ」と締め上げても、そもそも人権無視ですし、社会全体の経済効率も上がりません。引退した高齢者までもが市場経済原理によって締め上げられるのでは、社会全体にいたずらに恐怖心ばかりが蔓延して、若い世代まで暗くなってしまいます。ターゲットは、繰り返しますが、一四〇〇兆円の多くを死蔵している高齢富裕層です。

「高齢富裕層個人から若い個人への自発的な所得移転」と申し上げました。誰にそんなことを進める力があるのでしょうか。「政府はどういう政策を取るべきか?」と考えがちですが、推進主体は第一に民間企業であるべきです。供給過剰↓価格競争に悩む企業自身が、自分の長期的な生き残りのために、自助努力によって、消費性向が高い子育て世代にお金を回し内需を拡大すべきなのです。もちろん税収低下に悩む公共部門にも、同じような努力をすることは求められますよ。税金を払っているのは主として現役世代なのですから。ですがそのために税金を投人しては本末転倒です。