2012年5月16日水曜日

アメリカは「オーガニゼーション」から「フリーエージェント化」になりつつある

ピックさんは、時代は転換していて、何十年もアメリカ経済を象徴してきた「オーガニゼーション」から「フリーエージェント化」になりつつあると主張します。ウィリアム・H・ホワイトの「オーガニゼーション・マン」は、私も大学の経営管理論か何かのテキストとして読んだ記憶があります。

「オーガニゼーション・マン」は、日本風にいえば「会社人間」です。アメリカの大企業もまた、かつては終身雇用、安定した給料、医療保険や企業年金などの保障を従業員に与えていました。

これは「企業は家庭だ」というような家族的温情主義(ス夕-ナリズム)を背景にしており、それに対して、従業員は人生を通じての会社への忠誠を誓い、一生懸命働いていたのです。

ところが、八〇年代、九〇年代の、M&A(企業買収)や競争の激化と大企業の経営悪化なとがら、家族的温情主義は捨てられ、人員削減やレイオフといった大リストラが進行します。

その中で、一人一人が幸せに生きていくためには、会社に依存するオーガニゼーション・マンからフリーエージェントに転換しなければならないと主張するのです。ピンクさんはフリーエージェント化の進行の理由として、企業の路線転換の他に、生産手段の個人化、組織の寿命が短くなっていること、そして多くの人々が仕事にやりがいを求めるようになってきたことをあげています。

アメリカのフリーエージェント人口は3300万人だそうだ

ピンクさんはクリントン政権で、九五年から九七年にゴア副大統領の首席スピーチライター(演説原稿を書く人)を務めたアメリカ政治の中枢部にいた人です。ストレスと過労で身体を壊し、ホワイトハウス勤めを辞めて独立しました。

自宅で仕事をするようになると、家族と過ごせる時間がとれてストレスも少なくなり、体調がよくなったと喜んでいて、その体験もあるのでしょうが、フリーエージェントを肯定的に捉えています。

アメリカのフリーエージェント人口は控え目に見て三三〇〇万人で、全米の労働者の約二四パーセントにあたると、ピンクさんは推計しています。他の経済誌や経済政策研究所は四OOO万人以上が非従来型の、常用されない労働者だといっています。

さらにある市場調査会社は、二〇一〇年にはアメリカの労働者の四〇パーセント以上がフリーエージェントになると予測しているそうです。

ピックさんは、フリーエージェント人口三三〇〇万人の内訳を、フリーランスが一六五〇万人、臨時労働者が三五〇万人、起業家がニニ〇〇万人としています。フリーランスとは自分の手に技能があって活動している人で、起業家とともに肯定的に捉えています。

また、臨時労働者は、多国籍企業の九割以上が常に使っていて、アメリカ経済に欠かせない存在になっていると分析していますが、その労働と生活は厳しいとも書いています。