2015年12月5日土曜日

中国の共産党の危機意識とは

記事は銀行の管理が少しずつ国際化しつつあるとも書いていたが、管理の国際化は、商品の製造工程では、さらにきびしく要求されている。ヨーロッパ諸国では域内の商品の流通を円滑にするために、一九八七年に工業製品の新しい規格IS09000を決めたが、その規格に合格していないと、国際的な商品取引から締め出されるケースが増えてきた。その規格は、たんに商品の性能や寸法や材質などを指定するだけでなく、企業に対して、商品が設計され製造されている過程や、売られた後のアフターサービスまで記述し、それぞれの部門の責任者名まで明らかにした書類を提出することを求めている。
 
私はこれまで、中国における生産管理の遅れと、その経済的影響について、くりかえし述べてきたが、IS09000は、設計やアフターサービスまで含めて、その生産管理の全貌を開示することを求めているのである。こうなると、商品の規格が指定にかなっていても、その製造の仕方に問題があると、その商品は規格外とされてしまう。企業は従業員の作業のやりかたから、各機械・装置の実際の運転状況に至るまで、それらを再点検し、全工程のバランスを真剣に見直さなければならなくなる。
 
中国政府は、一九九二年に、輸出商品に対して、このISO規格を広く適用すると発表した。一九九四年あたりから、まず外国資本系の企業などが、次々とIS09000を取得しはしめた。実際には、ISO規格にかなっているかどうかを審査する機関が中国に設立され、審査には中国人があたる。だから、書類作りがうまいだけで、合格することがないでもない。しかし、それにしても、企業は設計からアフターサービスに至るまで、自分たちが何をどのように開発し、生産し、販売してきたかを、綿密に検討しなければならなくなるから、IS09000は、中国の生産管理の発展に強力な刺激を与えたことであろう。
 
中国経済が発展すればするほど、欧米や日本の大企業がイニシアティブをにぎる世界経済に組み込まれざるを得ず、中国経済は企業の職場での一挙手一投足から、欧米に似た組織と行動とに変貌して行かざるを得なくなる。それが出来るか出来ないかが、中国経済の将来を決めてしまう。中国の共産党と政府の首脳部は、強い危機意識を抱いた。一九九七年の中共十四期五中全会で、李鵬政治局員はこう演説した。