2015年9月5日土曜日

新商品開発力の格差

新商品開発力の格差を、単に金融技術力の差として捉えることはできません。私の出身銀行をふくめ邦銀の金融技術力や人材の質はあまり遜色がないのですが、外資系の強味は、シカゴのトレーダー、ヘッジファンドのマネージャーなどを含むグローバルな市場参加者とのネットワークを築き、彼等との日常的なコンタクトを通じて、どのような商品にはどこでニーズがあるかを知り、それをデザインし、商品化し、在庫管理できる総合力にあると思います。また資本配分の機能をもつ債券市場での大規模な取引で得られる情報の質と量は、米系投資銀行の競争力優位の基盤になっていると思います。

同氏はその才能と人柄を惜しまれながら急逝した。「米系投資銀行と邦銀とでは、プロと草野球ほどの違いがある」と断じるC氏は、邦銀で役員を勤めた後、著名な英国マーチャントーバンクの日本代表を経て、米国投資銀行Yの日本法人社長となった。それゆえ、以下に紹介するマーチャントーバンク、米国投資銀行、そして邦銀の比較論は、彼の実体験に裏づけられている。

英国のマーチャントーバンクが、相次いで外資の軍門に降ったのは、グローバルなレベルで競争する意欲、資質が経営者に欠けていたからです。ビッグバン以降、自由化、国際化が進展するなかで、彼等は適切な施策を講じませんでした。マーチャントーバンクは過小資本で、大きなリスクをとれなかったのです。

また、債券部門、とくにトレーディング部門が軽視され、新しい金融商品の開発力の弱さにつながったと思います。デリバティブに対する認識やリスク管理能力も著しく低いものでした。企業体として管理・組織面の弱体、コンピューター化の遅れなども目立ちましたね。

大陸系金融機関は資本力を生かして買収を積極的に行い、経営の中核に市場部門のプロを据えるなど企業文化を大胆に米国型に変えつつ、総合金融サービス機関へ脱皮しています。本邦金融機関は、不良債権処理に追われて、まだグローバルな戦略を描くまでに至らないが、大陸系金融機関の戦略に学ぶべきだろうと思います。