2014年10月6日月曜日

M&Aを容易にするための法律改正

TOBの対象となった企業は、公開買付に対する意見表明報告書を、公告が行われてから10営業日以内に提出しなければなりません。以前、TOBへの賛否の意見表明は任意でしたが、法改正によって、義務となりました。例えば、2010年2月に三菱レイヨンが、三菱ケミカルホールディングスにTOBされる際に賛同表明を行いましたが、意見表明報告書には、買付価格の評価、統合後のシナジー、上場廃止になることの評価など長い説明が含まれました。公開買付の結果は、株式市場全体に影響を与える重要情報であるため、公開買付者は、公開買付の結果を公告しなければいけません。

2010年1月にKDDIは、米国のメディア大手のリバティーグローバル傘下の中間持株会社3社を3617億円で買収して、国内CATV最大手のジュピターテレコム株の38%を持つ筆頭株主になると発表しました。KDDIは結果としてジュピターテレコム株の3分の1超を獲得することになるにもかかわらず、TOBの手続きを経なかったため、金融庁が手続きを問題視しました。金融庁の指摘を受けて、KDDIは持株比率を31%にとどめると発表しました。KDDIは買収対象が持株会社であり、ジュピターテレコム株9 3分の1超を直接取得するわけではないので、TOBの手続きは必要ないと考えたようですが、金融庁は資産管理会社の株式取得は、TOB規制に抵触すると発表しました。

これに対抗して、ジュピターテレコム株の28%を保有する、2位の株主の住友商事がTOBで、保有比率を40%に引き上げると発表しました。KDDIはジュピターテレコムへ取締役3名を送り込むことになりましたが、多額の資金を注ぎ込みながらも、経営上重要となる3分の1超の株式を取得できなかったことから、KDDIにアドバイスした法律事務所や証券会社の手腕に疑問が呈されました。2010年4月に住友商事とKDDIは、トップ会談を経て、ジュピターテレコムの企業価値向上に協力することで合意しました。

近年、日本のM&A関連法制は大幅に改正されて、日本のM&A増加に寄与しました。M&Aを通じて、日本企業の国際競争力を改善させたいという経済産業省が大きな役目を果たしてきました。政府はこれまで1997年の持株会社解禁、1999年の株式交換制度、2001年の会社分割制度の導入、2007年5月の外国企業との株式交換の解禁などM&Aを促進する様々な制度変更を行ってきました。

持株会社は、1947年に制定された独占禁止法の9条で禁止されていました。日本が高度経済成長を謳歌し、1990年にバブルが崩壊した後も、財閥復活を彷彿とさせる持株会社解禁は長年実施されませんでした。1995年に政府の規制緩和推進計画の中で、持株会社禁止の見直しを検討することになり、1997年12月の独占禁止法改正で、持株会社が解禁されました。日本企業の組織再編を容易にし、競争力を高めるという目的がありました。1997年12月にダイエーが持株会社1号として、ダイエーホールディングコーポレーションを設立しました。その後八社名にホールディングスと名前がつく、持株会社設立が急激に増えました。エイペックスーグループーホールディングスや角川グループホールディックスなどのようにグループとホールディングスの両方が社名についた企業もあります(新聞社の方が、最近は社名が長すぎて表記に困るという話をしていました)。