2014年8月8日金曜日

生態系が急速に変わる

いま、世界の森林(樹冠面積が当該地域の二割以上の閉鎖林)面積は約二五億ヘクタール存在する。うち一一億ヘクタール弱が熱帯林である。この半世紀聞に熱帯林の面積は四割減少したが、アメリカ政府やFAOの予測によれば、さらに今世紀末にかけての十数年内に、発展途上国の森林は四割減少するだろう。しかし先進工業国の森林資源は、ほぼいまと変わらない。現在、年一一〇〇万ヘクタールの熱帯林が伐採されている。その三分の一。は国内の焼畑農業、農牧地開拓、薪の採取のためである。残りの面積からの本材が主として先進国に輪出されている。アジア人牛洋地域で輸出される木材の半分は日本が輸入している。

森林はたんに木材資源を生産するばかりではない。それは水資源をため、水循環を保ち、降雨を保障する。また、土砂の流出や侵蝕を防ぐ。多くの野生鳥獣が住み、人間生活を豊かにする。目本の国土の三分の一一は森林におおわれ「その多面的な機能によって国土の多様性と可能性を生み出し、安全で豊かな国民生活に寄与している」(科学技術庁『日本の資源』一九八一年)。

しかし熱帯地方では、貴重な森林が急速に失われている。森林の伐採については一定の樹数を残したり、再植林を義務づけているところも多いが、これは守られなかったり、また再植林のアフターケアが行なわれないために苗木の枯死率も高い。最近ではチーク材がパルプ原料や合板用として用いられるために、人手の会社が巨木を伐採した後、中小木を中小会社が伐採し、丸裸にしてしまうケースもしばしばある。

いったん森林が失われると、生態系が急速に変わる。鉄砲水が出て、土壌が流失する。雨が降りにくくなり、旱ばっが起こる。森林の破壊は人間生活の貧困化を促進する。今日、世界における資源問題の大半に、豊ふな先進国の浪費と貧しい発展途上国の不足とが隣り合っていることから生じている。しかもこの貧しい途上国は自国で生産するエネルギー資源の大部分を豊かな国に輸出して、先進国の高い生活水準を支えているのである。アメリカの一人当たりエネルギー消費量はインドのそれの三四倍、日本のそれはインドネシアの一三倍に及ぶ。インドネシアでは八六年に一億四二〇〇万トン(石炭換算)のエネルギーを産出しながら、国内で利用されたのはその三分の一にすぎず、その差は輸出された。

しかも豊かな国では使い捨ての消費文明が形成され、年々莫大な量の消費財が捨てられている。日本では大多数の家庭電器製品は平均六-八年で廃棄され、一九八〇年には一〇軒に一軒が冷蔵庫を、また六軒に一軒がカラーテレビ受像機を棄てたとみられる。自動車は二軒以上が保有しているが、その反面、最近四半世紀に約二五〇〇万台がスクラップ化した。産業廃棄物の排出量は七三年の一億三六三二万トンから八三年には二億二〇五五万トンヘと一年間に六割強ふえ(『資源ハンドブック』一九八九年版)、国民一人当たり一日のごみ排出量は七七年の七九五グラムから八七年には八八九グラムへと増加した。