2014年9月5日金曜日

インフォームド・コンセントの前提条件

ここでは、複雑さを避けるために、患者は知的・精神的能力が普通で判断力のある成人の場合に限定して話していくことにする。医師が患者に説明してインフォームドーコンセントを得ようとする際に、前もって患者に話して、はっきりと理解し納得してもらっておかなければならない諸条件として、次のようなものがある。

《患者の医師への質問の自由》
医師が患者に説明している時に、わかりにくいことやわからないことがあったら、質問をすることは患者の自由であり、理解し納得するまで反復して質問をして差し支えない。

《患者が同意した医療を実施した時の医療上の責任》
患者がある医療を受けることに同意して実施された医療上の責任は、患者にはなく、同意を受けた医師にあり、その医師は患者が同意した医療を行なったことを理由として患者に医療の責任を転嫁することは許されないことになっている。

《患者の同意拒否権〉
医師が患者に説明し診療行為の選択肢を与えて同意を求めた場合、患者はいずれの選択肢にも同意をしなくてもよく、法律の許す範囲内で同意拒否権があると同時に、診療を拒否したために起こりうる医学的な結末について説明を受ける権利がある。

《患者の同意撤回権》
患者が医師に同意を与えた後でも、患者の考えが変わった場合には、同意を撤回したり変更を求める権利があり、同意した医療が開始前なら中止し、開始後でも中止が可能な場合には中止してもらう権利があり、そのような場合でも、医師は患者との人間関係を悪化させてはならないことになっている。

《医師を選ぶ患者の権利》
患者は医師を選ぶ権利があり医師を変える権利もある。

《患者の診療拒否権》
患者は、医師の治療に満足しなければ診療を拒否する権利がある。

《患者の医療の選択権の制限》
患者は医師が説明した選択肢の中から選択をする権利があるのであって、説明されなかった治療法をその医師に要求しても、医師が承諾しなければ強制することはできない。たとえば、出生前診断で先天異常が発見された場合に、患者が人工妊娠中絶を医師に頼んでも、医師の宗教上の理由で実施できないと断られた場合に、患者は医師に強制することはできない。

以上のことを事前に患者に話して納得してもらってから、インフォームドーコンセントのための説明に入るのがよいとされている。