2014年6月4日水曜日

信託の終了

信託財産の管理や運用をしていくうちに、財産の形が初めと変わったり、増えたり減ったりすることがあります。たとえばおカネを受け入れて、それで株式や社債を買った場合とか、建物の信託を受けて、それが火事で焼けて火災保険金を受け取った場合などで、これらもすべて信託財産であり、もちろん信託法の保護を受けるわけです。

一方、受託者は信託財産を忠実に管理し、その増減や変更を記録した帳簿を備えて、いっでも委託者や受益者などに対して財産の状態を説明できるようにしておかなければなりません。ただし、受託者の管理が適当でなかったために、信託財産に損害を与えたときとか、受託者が委託者との約束を守らないで勝手に財産を処分したようなときは、委託者や受益者は損害の賠償や処分の取り消しを受託者に請求することができます。

信託は信託契約に定めてある目的が実現したり、契約の期間が終わったときになくなります。たとえば、子供の学資金に充てるための信託は、その子供が学校を卒業すれば目的が終わるので、信託は終わります。また五年とか十年とかあらかじめ信託の期間を定めておいたものは、その期間がたてば信託は終了します。もっとも、いろいろの事情で、途中で信託を続けていくことができなくなって終わることもあります。たとえば、不動産の信託で建物が火事で焼けてなくなってしまったような場合です。そのほか、委託者自身が受益者であるときは、信託の契約を解消することができます。しかし、以上のようないろいろの理由から信託が終わっても、受託者が受益者に信託財産を引き渡してしまわないうちは、まだ信託は続いていると見なされます。

したがって信託は、実際には信託財産の返還によって終わるといえます。なお、受託者は原則として途中でその任務を辞退することはできません。そして、もしやむをえない事情でやめるとき、または受託者に不都合があって裁判所の命令によってやめさせられたときは、頼まれた信託の仕事を他の新しい受託者に引き継ぐことになっています。したがって、受託者の方の都合によって信託が終了するということはありません。ただし、証券投資信託と貸付信託の無記名式証券の場合、信託期間が満了して相当年月がたって受益者(証券の持ち主)がわからないときは、委託者または受託者がこれを整理して信託関係を終了させることができます。

なお、信託法には、信託の期間についてなんら定めていませんが、永久とか千年といった非常識に長い信託は実際には無効といわれています。特に、イギリスでは永久信託をはっきり禁止する規定があります。そこで実際は、せいぜい五十年とか百年とかの信託が一番長いとされています。