2014年7月3日木曜日

不動産売買や貸借の仲介などの不動産業務

不動産の売買や貸借をする場合に、互いにその相手方を見つけるのはなかなか困難なものです。土地は同じものが絶対に二つないわけでナし、建物についても、人によって好みがいろいろ違います。そこで、信託会社などが双方からの申し込みを受け付けて、その希望にかなったものをあっせんすることが必要です。この仕事は、戦前からの伝統的な業務ですし、終戦直後信託会社の経営が苦しい時代に、その大きな収入源となったこともあります。昭和四十年代に入ると、いわゆる衣食が足りて住居だけが不足している状態となり、また会社工場などの新増設や都心の過密地からの移転が盛んになってきた事情をも反映して、再び信託にとって重要な仕事となってきました。

特に、既存の不動産の単純な売買のあっせん(仲介業務)といったことから一歩踏み出して、お客の依頼を受けて宅地の造成から分譲、あるいはマンションの建築販売などの企画を立て、これらの資金が足りないときは融資をしたり、販売の事務を代行するなどの販売提携業務の推進により新しい住宅供給に積極的に取り組んできています。新聞の不動産広告で、分譲マンションなどの場合に、売主○○不動産、販売提携(代理)○○信託銀行といった表現をご覧になった方も多いことでしょう。

そのほか、信託会社は信託の方法によらないで、代理契約で不動産の管理や処分をすることは不動産信託の項で述べた通りですし、また不動産について取引代理(売買の約束は、お互いに成立していて、契約書を作ったり物件の受け渡しや登記など実際の事務手続きだけを代行すること)や登記代理などいろいろの代理事務を行っています。

なお、これら不動産に関する仕事は、従来はだれでもできたのですが、土地の値上がりと住宅難につけこんで、悪質なブローカーがはびこって被害を受ける人も出てきたので、昭和二十七年に宅地建物取引業法が制定され、国家試験を受けた一定の資格のある人しか営業できないことになりました。したがって、信託会社も不動産の売買貸借の仲介を中心とする業務については、この法律の適用も受けるわけです。その後、この法律は、何度か改正され、媒介契約制度の新設、流通機構の整備など流通巾場の近代化が進められています。信託会社の売買仲介は昭和六十三年度中に三万四千三自件、取り扱い金額三兆五万百九十九億円に上っています。