2012年8月23日木曜日

米朝・日朝正常化が首脳会談の目的

南北対話には、もう一つのセオリーがある。それは、対話を必要とした目的が達成され国際的な苦境を脱出すると、北朝鮮は対話の中止に向かうのである。

それでは、北朝鮮が二〇〇〇年六月の南北首脳会談に応じた本当の目的は何であったのか。それは、米朝正常化の早期実現と日朝正常化への環境作りであった。

二〇〇〇年一〇月に行われたクリントン・趙明禄会談の前に、米朝両国は「テロに関する共同声明」を発表し、北朝鮮はテロ行為を激しく非難しテロを支援しない方針を明らかにした。これは、米朝正常化への最大の障害の一つを取り除き、クリントン大統領の訪朝を実現するためにはどうしても必要であった。この「テロ放棄」と「南北対話の実現」が、米朝の正常化の実現に最低限必要な条件であった。

こうして米朝正常化への道筋が示されれば、日本も後を追いかけるように正常化に応じるであろうというのが、北朝鮮の計算である。南北首脳会談発表後に、日朝正常化交渉が再開され、米朝首脳会談も実現したのである。こうしてみると、北朝鮮の狙いはみごとに成功したといってもいいだろう。

どうして、北朝鮮の目的が首脳会談と南北の交流促進ではなく、米朝正常化と日朝正常化であると判断できるのか。北朝鮮が韓国にまったく譲歩していないからである。

例えば、南北の鉄道連結で合意したとして、韓国側では工事の起工式が行われた。ところが、北朝鮮側では起工式を行わず工事が始まらなかったのである。これは、北朝鮮としては工事に取り掛かるつもりがないことになる。南北の国防相会談も実現したが、国防相聞のホットラインの開設や軍事演習などの軍備管理・軍縮に関する問題では、まったく進展がみられなかった。経済協力でも具体的な合意はなかった。南北の閣僚級会談でも、北朝鮮側の代表は現職の閣僚ではなく、工作機関の高官であった。これは、北朝鮮が韓国をなお「工作」の対象として考えており、普通の「国」の関係には移行していない事実を物語っているのだろうか。

南北首脳会談が統一への協力を目的とするなら。なによりも南北首脳会談の定期化など南北の関係をより組織的で日常的な状態に移行させなければならないが、首脳の定期会談には合意していない。また、北朝鮮の生産設備や産業の再建などの具体的な課題に直ちに取り組まなければならないはずだが、北朝鮮はそうした意向も希望もまったく示していないのである。